Smoky Quartz

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Aliens(付き合っててちょっと病んでるキョン谷)

橙の空がじりじりと群青に侵蝕されていく。
細い三日月に寄り添う惑星は、鋭い銀の光を放っていた。
公園から一人、また一人と去っていく子供達。
休むことなく働いていたブランコは余韻で軋み、やがて静かに止まった。
喫茶店かファミレスにでも場所を移そうか迷いはしたが、何となくこの雰囲気が好ましくて。
木製のベンチに腰掛けたまま、谷口は誰もいなくなった公園をぼんやりと眺める。
そして、隣に座るキョンも。
子供達に代わって訪れた小さな夜の住人は、その翅に水銀灯の輝きを受けて、悠々と飛び回っていた。
谷口の冷たくなった指先に、慣れた体温が触れる。
重ねられたその手の平も、同じ様に冷たかった。
「――……帰るぞ」
手を繋ぎ直してキョンが立ち上がる。
空は一片の隙間もなく濃紺に覆われ、ひんやりとした風が二人の肌を撫でた。
この場に不釣合いで、異質なものを排除するように。
引かれた手を握り返した谷口は腰を上げ、並んで歩き出す。
公園の出口に差し掛かるとどちらからともなく離れ、指先はまた温度を失った。
「どっか遠くにでも行きたいな」
いつもと変わらないトーンでキョンは言う。
「……遠くって、例えば?」
「さあな」
「何だよ、それ」
月を見ながら曖昧に笑う声に、眉を顰めて谷口も天を仰いだ。
その首筋を盗み見るキョンの視線には、気付かないまま。
狭いワンルームの空間だけが、無いものねだりをする自分達の居場所だった。
  1. 2017/04/12(水) 02:00:45|
  2. SS
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